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マンションの防災マニュアル作成の考え方

公開日:  最終更新日:2014/11/28

マンションの防災

平成7年の阪神淡路大震災、平成23年の東日本大震災と未曾有の天災を経験した結果、マンションという一つの集合住宅は災害時に居住者同士が協力して対応できるという戸建てには無い利点があります。

この利点を生かす為に日頃から気をつけておくべきポイント、いざという時にトラブルになるかもしれないポイントなどをご紹介してまいります。以前、100世帯向けのマンションの防災備蓄用品導入例をご紹介する記事を書いているのでこちらもご覧下さい。

天災時に予想される影響

ライフライン停止

ライフラインが停止した際の、水や食料の調達、高層階は特に避難時の困窮が目立ちます。高齢者の場合はエレベーターが停止する事から水などの必要物資の運搬が困難になるなどがあげられています。

安否確認の迅速化

安否確認

震災時の大部分のマンションでは、個々に避難された為、辛い思いをされた方が多いと聞いております。特に高齢者、障害者、乳幼児がいるご家族、外国人の方などは充分な情報を得られなかったり、避難に時間がかかるなどで大きな被害が発生しています。

個々に避難された方の中には、指定避難所に出向いても満員で入れず、車中で過ごされたり、町内の別の避難所を探すなど避難場所の確保に苦労された方もいらっしゃるようです。

近年の行政は天災に備えた町内会単位での備蓄や避難訓練などに力を入れている事が多いのですが、一つのコミュニティとして確立されているマンションの場合、町ぐるみで行われている行事などに参加しないことが多く、日頃のコミュニケーション不足から孤立してしまう場合も否定できません。

役員の不在時

阪神淡路大震災は早朝、東日本大震災はお昼の発生でしたが、日常的に中心的な役割をされる管理組合役員の方が不在であったマンションでは充分な対応が出来なかったそうです。管理人不在のマンションなどは特に連絡網の徹底が重要なポイントとなる様です。

また賃貸住居がある場合は、その入居者の家族構成などは管理会社や管理組合しか知らない事が多く、組合員名簿と異なる居住者の安否確認が出来ず、重大な被害となる場合があります。

防災に備えたマンションでは

エントランスホールなどを避難所として開放し、管理組合で炊き出しをするなどコミュニティ形成にも役立った。防災備品の備蓄をしていたお陰で居住者に貸与し、難を逃れたという事例を聞いております。

また、居住者名簿を作成していたマンションでは、居住者が協力して高齢者に備蓄品を届けたり、安否確認の徹底などが行えた事により、スムーズな支援を受ける事が出来たという事です。

被災者生活再建支援制度に含まれる問題

平成7年の阪神淡路大震災をきっかけに平成10年に創設された制度ですが、例えばマンションが全壊するなどで日常生活の基盤に著しい被害を受けた場合、支援金が支給されます。

しかし、住居を賃貸に出しており居住していない場合には支援金が支給されず、住居の賃借人への支援も行われないという問題が過去に発生しております。

また災害救助法に基づく「住宅の応急修理」(半壊以上の被害を受け、自ら修理する財力のない世帯に対し、日常生活に必要な台所、トイレ、居室などの必要最小限の部分を応急修理する費用の貸付)では東日本大震災よりマンション共用部へも適用される事となりました。

しかし、複数の区分所有者で構成されるマンションでは各区分所有者の収入要件があるなど手続きが非常に煩雑で全員の書類のとりまとめに至らず利用を断念したマンションも多かったと聞いております。

「備えあれば憂いなし」と昔から言われておりますが、いつ発生するかもしれない万一の事態に備えて防災マニュアルや居住者名簿の作成など、出来る事から対策を行っていった方がよいでしょう。

マンションでの防災マニュアル作成方法

防災マニュアル

では、マンションでの防災マニュアル作成として押さえておかなくてはならないポイントは何があるでしょうか。また、備蓄品などは何を用意しておけばよいでしょうか?

過去の震災を体験されたマンションの中で役立った備蓄品など実例をあげてご紹介してまいります。

まずはマンションだけではなく各住居でも防災対策を徹底する事が重要となります。個々が対策を講じ、マンションでも対策をとることにより被害を最小限に抑えるスムーズな避難が行えるようにしましょう。

まずは自助努力

備蓄

天災が発生したら、まずは自分自身の身の安全を確保しなくてはなりません。そのためにもご自宅内の家具などの転倒防止や落下防止対策、水や食糧の備蓄、ご家族がいらっしゃる場合は家族間での連絡方法や待ち合わせ場所を決めておく事が重要です。

身の安全を確保できたら共助

共助

ご自身の身の安全を確認できたら、共用部の破損(外壁の損傷、ベランダ、廊下などの損傷など)状況を他の区分所有者の方と一緒に確認しながら、入居者が室内で被害に合われていないかの確認をします。

この確認作業をする為に、組合員名簿ではなく、入居者名簿を事前に作成しておく事が必要です。

備蓄量は?

100世帯マンションの備蓄例

東日本大震災ではライフラインの復旧に1週間を要した事から、現在は備蓄の目安として食糧は3食×7日分以上×人数、飲料水は3リットル×7日分以上×人数といわれています。

全てを各家庭やマンションで備蓄するにはスペースなどの問題もありますので、目安としてマンションでは3日分程度を備蓄するのが妥当といわれています。

マンションで保有していると安心できる防災用品

鉄筋コンクリート造で建築される事が多いマンションでは、地震等の天災でも全壊・崩壊する事がない為、生存率が高いといわれています。

東日本大震災では、以前に発生した阪神淡路大震災の教訓を生かし、マンション管理組合で防災用品を備蓄していたマンションが少なからずあったと聞いております。

エントランスが充分にスペースのあるマンションでは、簡易トイレの設置、防災テントを張り、炊き出しを行いながら住民間のコミュニティも更に深まり、難を乗り越えたという報告があります。

絶対的に確保しておくと良い用品は、懐中電灯、ヘルメット、粘着テープ(掲示物の貼り付けや応急修理等に使用)携帯ラジオ、乾電池、サイレン付きマイク、ホワイトボード、居住者名簿、高齢者や病気の方など支援が必要なご家族がいる方の援護者名簿は準備していると良いでしょう。

そのほかにはブルーシート、救急用品、防災マップ、マンション建築図面及び設備図面、消火用バケツ、カセットコンロ、炊き出し用鍋、携行用給水タンク(外部から水を確保)は最低限必要でしょう。

いざという時の為に知っておくべき設備のこと

最近のエレベーターは地震が発生した際は、近くの階で自動的に停止するなどの機能がありますが、旧式の場合、地震時にはどういう対応となるのかを確認しておく必要があります。

またライフラインの要となる水道設備、高架水槽や受水槽はどこにあるのか?停電時にも給水は出来るのか?天災発生時の給水方法は確認しておきましょう。

地域との繋がりが重要

東日本大震災時には、日頃から地域との繋がりが無かったため、避難所に入れなかったというマンション居住者もいたそうです。

地域性もあるかと思いますが、行政の防災対策連絡は町内会と連携している事が多くなってきております。日常生活でのスムーズなコミュニケーションがいざという時に役立ちます。

ライター:マンションナビ美
不動産系会社勤務を経てフリーで活躍。自身も分譲マンションのオーナーとして、大規模修繕や、理事会役員を経験する。実体験からマンション業界を分かりやすく解説する。

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