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管理費滞納の時効は5年!未然に防ぐ法的手段

公開日:  最終更新日:2016/09/13

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国土交通省の平成25年度マンション総合調査結果によると管理費などの滞納でお困りのマンションが27.2%あるとなっております。

管理費や修繕積立金は、マンションを維持管理するために必要なお金ですので、滞納があると健全なマンション維持管理が出来なくなる恐れがあります。

法律上、費用負担の滞納には事項があります。民法では一般債権は10年で消滅しますが、定期給付債権は5年で消滅するようです。

マンションの管理費や修繕積立金はどちらに当たるのか議論されておりましたが、2004年に行われたマンション費用負担滞納裁判の判決で定期給付債権になるという判断が下され、時効が5年と確定しております。

この判決以降、費用負担滞納者に対する対応を早急に行う必要が出てきたといわれており、現在、滞納が無いマンションでも今後の社会状況によっては我が身に降りかかる問題となってくるかもしれません。

今回は、滞納を防止する方法や早期対応方法について考えて参りたいと思います。

滞納を防止する為に

費用負担を滞納される方は、不況や病気などによる生活の変化から支払いが困難になられる方もいらっしゃいますが、一般的には管理費や修繕積立金の必要性についての認識不足から「後回し」にされたり、修繕積立金の意味を履き違え「積み立てているお金があるから大丈夫」と思われる方もいらっしゃるようです。

滞納を未然に防ぐ為には、管理費がどのように使われているのか、修繕積立金の重要性などを区分所有者の皆様に認識して頂く事が重要です。

管理組合の役員を輪番制にするなど、実際の組合運営に関わって頂く事や月例収支報告を区分所有者に配布するなどで、費用負担の責任の重さを認識して頂くようにしましょう。

また万一、滞納が発生した時の管理組合の対応方法を明確に提示する事でけん制する事も必要でしょう。

知人から聞いた話の為、未確認ではあるのですが、費用負担滞納防止のために、一定の期限を越えて滞納が発生した場合、駐車場契約や駐輪場契約を解除するという規約を作っているマンションもあるそうです。

滞納の状況によっては弁護士が必要になる場合もありますので、滞納時には損害遅延金や違約金を請求する事ができる旨を定めた管理規約は近年は一般的になりつつあるようです。

滞納が発生したら

大部分のマンションでは管理会社に収納代行業務を行って頂いているかと思いますので、まずは管理会社のフロントマンに手続きをして頂きましょう。

通常は電話で滞納状況の確認と遅延理由や入金予定を話し合います。同時に文書による督促も行います。

初期段階の滞納の場合は、分割入金や通常の費用負担プラスアルファで支払ってもらうなど、滞納者の状況に応じてフレキシブルに対応する事で早期に滞納金を回収することが出来る事があります。

小額でも支払うという行為を滞納者に繰り返してもらう事により、長期的には滞納金がゼロとなる可能性もあります。

滞納初期は速やかな入金をお願いする注意喚起、中期では遅延損害金や違約金が発生する旨と管理組合でも問題となりつつあるという点を連絡します。

中期段階まで進んだ場合は、管理組合から滞納者の自宅を訪問し入金日の約束を文書で交わすようにします。期日までに入金が無い場合は、法的措置をとる際の証拠となりますので内容証明郵便で督促を行います。

これは、誰が誰宛にどのような内容の書面を送ったかという謄本を日本郵便が証明してくれる制度で、裁判となった際に滞納者から「そんな手紙はもらっていない」などの言い逃れが出来ないようにする為に必ず必要な手続きとなります。

どうしても支払って頂けない場合は以下のような手続きを踏む事となります。

支払い督促制度を利用する

これは訴訟をする前に出来る簡易な法的手段です。管轄の簡易裁判所に支払い督促申立書などの必要書類を提出すれば、裁判所が申し立てに基づいて滞納者に対して支払い督促状を送付してくれます。

送付されてから2週間を経過しても滞納者から異議申し立てが無ければ、仮執行宣言を付加してもらうように裁判所に申し立てをします。決定されれば強制執行が出来るようになりますが、滞納者から異議申し立てがあった場合は訴訟となります。

強制執行とは

滞納者が給与所得者の場合は給料を差し押さえる事ができます。ただし、生活していく上で不都合が生じますので全額を差し押さえる事はできません。

滞納者の取引銀行などが分かっている場合は預金の差し押さえも可能です。滞納者が専有部分を賃貸している場合は、その賃料を差し押さえる事ができます。

もし、滞納者が別の不動産などを所有している場合やテレビ・パソコンなどの動産を差し押さえる事もできます。

小額訴訟制度を利用する

滞納額が60万円以下で立ち退きなどの複雑な事件が絡まない場合は、原則として1回の審理で口頭弁論終了後に即日判決が出されます。申し立て料が訴訟額の1%と低額な為、管理費滞納訴訟ではよく利用される制度です。

しかし、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出する事になりますので、滞納者が遠方に住所を移している場合などは注意が必要です。

通常訴訟の場合

最後の手段として通常訴訟がありますが、裁判費用を考え管理組合で充分に検討する必要があります。

訴訟の場合は、滞納区分所有者の財産(マンション)を競売し、その代金から支払いを受ける事となりますが、住宅ローンなどの抵当権が設定されていて、余剰の配当金が無い場合は、競落人に請求する事になります。

先取特権を行使する

区分所有法の中では管理費などの債権については、先取特権を認める条文があります。(区分所有法第7条)これは、滞納者の動産や不動産の競売売却代金から優先的に弁済を受ける事ができるというものです。

滞納者が財産を任意で処分した場合

滞納者が競売されるのが嫌で費用負担責任を負わずに別の方にマンションを売却してしまった場合、滞納された管理費などの費用は滞納者と新たに区分所有者となられた方の両方に請求する事ができます。

これは区分所有法で定められております「区分所有者の特定承継人は、その承継前に生じた管理組合法人の債務についても、その区分所有者が前条の規定により負う責任と同一の責任を負う」からなります。

例え、前の所有者と購入者の間で「滞納債務は前の所有者が清算する事」と約束をしていたとしても、管理組合は購入者に請求する事ができます。

通常、中古マンションの売買時に不動産仲介業者より債務が残っている旨を説明されている筈ですし、重要事項説明書内にも記載される事項ですので、「知らない、聞いていない」は通用しません。

万一、仲介業者より説明を受けていなかった場合は、重要事項説明義務違反となり仲介業者に損害賠償を請求できます。

未入居住居や相続の場合

滞納者が死亡などでマンションを相続された場合は、上記と同じく相続人が支払い義務を負います。また、一般的に「売れ残り」といわれる未入居住居は分譲業者(売主)の持ち物となりますので、売主が管理費などを負担します。

以前に売買契約書の特約で「竣工後、○ヶ月間は未販売または未引き渡しの住戸があっても、売主は管理費等を負担しない」という条項をつけた売主がいましたが、区分所有法違反として裁判で敗訴しております。

売主は未販売住居の所有者であり管理費などの支払いをしなくてはいけないという認識がこの裁判で確立しております。

時効に注意しましょう

前回も記述しましたが、管理費などの滞納の時効は5年となっております。督促をした時点から5年を経過した滞納金については免除されてしまいますので、注意が必要です。

ただし、この5年の間に滞納金を少しでも支払っている場合や訴訟を提起し、滞納者が自身の滞納を承認している場合は時効は中断します。

管理費や修繕積立金は全住戸の専有面積を元に均等に分けられていますので、一戸でも滞納が発生すると健全なマンション維持管理が出来なくなってしまう恐れがあります。

提訴となると費用もかかって参りますので、管理組合の費用負担が増える場合もあります。早め早めの対応で良好なマンション運営を心がけましょう。

ライター:マンションナビ美
不動産系会社勤務を経てフリーで活躍。自身も分譲マンションのオーナーとして、大規模修繕や、理事会役員を経験する。実体験からマンション業界を分かりやすく解説する。

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